転勤族、最後の引っ越し
夫の父は転勤族だった。夫の母は父親と離れて暮らすことがかわいそうだからと単身赴任を選ばなかったので、夫は小学校を3回変わった。でも、子の心親知らず。
「転校なんていいことないよ。地元もないし、幼馴染もいないし」
夫はそう言う。今はドライな夫も転校の度に友だちとの別れが寂しくて堪らなかったそうだ。むしろ、そういう過程があったからドライになったのかもしれない。今の夫の実家は夫が高校生になる時に移り住んだ。夫は20歳で就職して一人暮らしを始めたから、特別な思い出も思い入れもないと言う。
そんな夫も転勤族。大体2、3年ごとに動く。来年、遅くとも再来年には動きがあると思う。
そんな微妙な、いや絶妙なタイミングで、わが家はマンションを買った。
きっかけは支援センターの幼稚園説明会。まだ先の話だからとのほほんと不参加を決め込んでいたら、うちが今住んでいる地域が幼稚園激戦区だと漏れ聞こえてきた。
- 2歳児クラスのプレ幼稚園というものがある。
- プレ幼稚園に通わせないと入れない園もある。
- 園によっては1歳児対象のプレのプレクラスがある。
- 入園には優先枠があって、プレ枠や兄弟枠がある。
- 2年、1年保育は若干名の募集しかない。
知らなかった。幼稚園て入りたい園に3歳になったら申し込めば入れるんじゃないのか。
なるほど。だから説明会には0歳、1歳の子の親御さんも参加していたのか。「今のお母さんたちは気が早いんだな」と思っていたけど、私の方が「あの人ちゃんと話聞かなくて大丈夫なのかしら?」と思われていたのかもしれない。
じゃあ、来年わが家が転勤になったら、
2017年 転勤
2018年 在宅orプレ入園
2019年 年少で入園
2020年 転勤 年中で転園
ということになるから、転勤先によっては幼稚園探しが大変になるかもしれない。
軽い危機感を覚えて夫に話をしたら、
「マンション買おう」
と。ずいぶん唐突なことを言い出すなと思った。でも夫は前からこっそり物件を探していたらしい。
娘に自分のような寂しい思いをさせたくないから。
思い立ったが吉日で、8月に1件だけ内見したのが今住んでいるマンション。他の物件を見るまでもなく即決したくらい良い家。
娘にとっては最初で最後の引っ越し。もしかしたら引っ越し早々単身赴任もあるかもしれないけど、家族3人、これからここで沢山の人と出会い、沢山の思い出を積み重ねていく。いつか娘が巣立っても、いつでも羽根を休めに帰ってこられる故郷にしてあげたい。