人のふり見て我がふり直す
菅野美穂のドラマ「砂の塔」。ドラマだから誇張されているとはいえ、強烈なママ友のキャラといびりにイラついたり、ビビったりしながらもついつい観てしまう。単純に菅野美穂が好きなのと、ああいうママ友やモンスターペアレントは所詮、フィクションだと思っているから。
…なんだけど。
ドラマレベルではないけど、モンスターマザー(以下モンママ)は実在した。この夏、足繁く通った支援センターにそのモンママはいた。
モンママは娘Kちゃんをうちの娘と遊ばせない。「あっちで遊ぼうね」、「こっちに来ちゃダメ!」と言ってはいちいち引き離す。娘以外の子とは普通に遊ぶ。
お昼ごはん中、バナナ大好きな娘がうっかりバナナの皮を舐めてしまったのを見て、「やだ!汚い!バナナの皮って農薬すごいのにねぇ…」と鬼の首を取ったように言う。
娘がセンターの職員に「ちゃんといただきますとごちそうさまして、残さず食べて偉いね!」と褒められればすかさず、「Kちゃんだって家ではちゃんとご挨拶できるよね!いつもは残さず食べてるよね!」と対抗心を剥き出し。
などなど。初対面の挨拶を無視されたくらいなので心当たりは全くないんだけど、とにかく私たち親子は目の敵にされた。でも目くじらも波風も立てるだけ損だから、モヤっとしつつも愛想笑いでのらりくらりかわしていた。
そんなある日。私とモンママの面前でKちゃんが突然娘の頭を叩いた。娘は驚いて大泣きした。
そりゃ「あらら」とは思ったけど、Kちゃんに悪意がないのはわかっていたし、小さな子ども同士は叩いたり叩かれたりなんてお互いさまだから、大事にするつもりなんてさらさらなかった。ただ正直に言うと、こちらが「謝れ(謝らせろ)」と言うことはなくても、向こうが「謝る(謝らせる)だろう」と思ってはいた。自分ならそうするからだ。
が、モンママは支援センターの職員にすがりついて、
「うちの子はこんなことする子じゃないんです!こんなこと初めてなんです!」
と、気の毒になるくらい必死にわが子の弁護を始めた。それだけならまだしも、
「あの子に何かされたんでしょ!?だから叩いちゃったんでしょ!?」
と、まさかの正当防衛論を展開。
さすがに、「これはないな」と思った。
支援センターに行くのをやめたらモンママの思う壺だと思っていた。通い続けたのはただの意地だった。でも、なかなか泣き止まない娘を見ていてやっと気がついた。モンママがKちゃんをうちの娘と遊ばせないようにするのも、娘が嫌がられないように私が他の親子に気を遣い過ぎるのも本質は同じで、親のエゴで過干渉だということに。
娘は叩かれたのが痛かったことよりも、私の押し付けがましさと体裁を取り繕うような態度が悲しくて泣けたのかもしれない。
私は、娘に友だちを作って“あげる”という、子ども思いの母親ぶった独り善がりと、支援センターに行くのをやめた。