こじらせ母の育児と育自

高齢出産のち、2歳差姉弟の育児。

小児鍼のピエロ先生

小児鍼に行く前は、娘と娘の中の疳の虫は大暴れしていた。
日中はほぼ興奮状態。思うようにならないことがあれば金切り声で叫び、手にしたおもちゃや食べ物を投げた。私や夫を噛んだり、抓ったりした。そして毎晩2時、3時に起き出しては明け方までハイテンションで遊ぶ。娘の個性だと言い聞かせて相手をしてきたけど、やっぱりイライラしたし疲れた。そして、何か取り憑いたかのようなはっちゃけぶりに恐怖に近い不安を覚えることもあった。神頼みに近いことに目が行くようになり、宇津救命丸や樋屋奇応丸、虫封じのお寺について調べるようになっていた。その時たまたま小児鍼を知った。
「赤ちゃんに鍼を打つの?」と思う人もいるだろう。私も最初は「そんなことさせられない」と思った。でも実際は何のことはない、専用の鍼と手で身体を撫でるタッチセラピーのようなものだ。

 

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関西の方だとわりとポピュラーらしい。近場にないかと探したら、まさかの徒歩圏内にあったのが今通っている鍼灸院だった。
東洋医学は合う合わないがあるし、即効性は期待できないと聞いていたから、「歩いていけるし、効果があったらめっけもん」くらいの軽い気持ちで通い初めた。
それが、3回目には嘘みたいに落ち着いてきた。いや、嘘ではなく本当に落ち着いてきた。

先生は娘との距離感を取るのが抜群に上手かった。「目が合わない(くらい癇の強い)子は久しぶりだなぁ。なかなか手強いお嬢さんだ」と言われた初日。鍼灸院に入るや大泣きし、先生の視線を避けるように顔を背けていた娘は、30分後には泣き止んで大人しく施術されていたのだから。
先生曰く、「目を合わせようとすると威圧的な感じを受ける子もいる」のだとか。よく授乳中に目が合わないと悩むお母さんがいるけど、それは障害云々よりもそういう子の可能性があるそうだ。そういう子には向こうからこちらを見てくれるよう、近づいてくれるよう仕掛けるのがいいらしい。先生は一見すると娘に無関心な風を装いながら、たまに離れた所からべろべろばあしたり、おもちゃを振ったりして大道芸のピエロのようにおどけてみせた。このツンデレ作戦にまんまとはまった娘は徐々にピエロ先生を目で追い始めた。今ではピエロ先生を見ると笑顔になる。

先生自身、長男さんがかなり癇の強い子だったそうだ。その長男さんと長男さんの育児で疲れきっていた奥さんのために小児鍼を勉強したそうだ。相当大変だったらしく、手強いお嬢さんの娘を凌ぐ激しさだったと言うから想像もつかない。だから私が話す娘のはっちゃけ話にも「そうそう!大変ですよね〜!」と前のめりで共感してくれた。私の悩みや不安に初めて同じ立場で共感してくれたのが先生だった。そして娘が感じてきたであろう恐怖や不安、寂しさに初めて共感してくれたのもまた先生だったのだと思う。

通い始めてからもうすぐ4ヶ月。たまに癇癪と月齢相応の自己主張はあるけど、のべつ幕無しの奇声はなくなった。夜泣き、夜遊びはほとんどない。布団で昼寝ができるようになった。いつも投げていたぬいぐるみを優しく撫でるようになった。ご機嫌な時間と何より笑顔が格段に増えた。
とはいえ、これは全部娘自身の頑張りと成長に他ならない。鍼に行かなくても娘は成長できただろう。でも小児鍼とピエロ先生との出会いは成長のきっかけのひとつになったと私は思っている。
「もう来なくても大丈夫ですよ」と言われる日が寂しくも待ち遠しい。