ぶるぶる攻撃はいやいや期の前兆?
娘にはちょっと不思議な行動や癖がいくつかある。それには週替わりや月替わりで娘がハマるブームのようなものがある。最近は指差しブームなこともあり、人差し指を立てるのがお気に入りなようで、左右の人差し指同士をくっつけては悦に入っている。あと、生まれてからずっと寝る時は指しゃぶりする子だったけど、最近は抱っこで寝る時は指しゃぶりしながら私の襟ぐりを掴むようにもなった。見ていて面白いし可愛い。
でも、あまり突飛な行動だと障害や病気を心配してしまうことがある。
ちょっと前にあったのが顔を真っ赤にして両拳を握り、わなわなと身体を震わせる動きだった。時間にして2、3秒位で、それこそうんちを気張っているような力みっぷりだった。1日5、6回あったかと思えば、次の日は1回もなかったりと日によってまちまちで、うんちのタイミングとも明らかに違う。
てんかんを疑ったけど、それにしては短時間だし、前後の意識もはっきりしているし、顔色も良い。
こうなるとやっぱり検索してしまうのが、情報社会に生きる新米母ちゃんの性。
あった。これだ。ぶるぶる攻撃!
シャダリング・アタック(身震い発作)
このような発作は英語で「シャダリング・アタック」「身震い発作」と呼ばれているものです。
身震い発作というのは、乳児期にときどき認められる症状で、発作的に体を硬直させ、頭や背を軽く前屈し、肘や膝の関節を少し曲げた姿勢で腕や足を細かくふるわせます。発作は10秒前後で終わります。一日に何回も発作をくり返すこともあります。
身震い発作は、「背中に冷水が入って、ヒャッと身を縮めるときのような動作」「冷水中に入ったときのような動作」「排便時にきばるような様子」などと表現されています。普段の動作中に突然出現し、もとの動作を停止し、一点凝視し、歯をくいしばり、四肢に力を入れ、身体をこわばらせ、息むような動きもみられ、顔面頸部、体幹、および四肢の全般的、瞬間的な筋肉の収縮で、身体の一部の動作ではなく、「イーツ」「キーツ」といった発声を伴うこともあるようです。顔色は紅潮することがあっても蒼白になったり、チアノーゼは伴わないようです。
発作の発現には、興奮、怒り、恐れ、不満のような情動的要因が関係しているといわれます。
症状がけいれんに似ていますので、脳波や発作時ビデオを調べた研究の結果も報告されていますが,脳波には異常所見はないとのことです。このような身震い発作は,生後6ヵ月以後の、赤ちゃん時代の後半から1~2年頃までの間に現れる場合が多いようです。
多くのお子さんが年齢とともに発作の回数が減って自然に治ってしまうようです。したがって、特別な治療は不要です。
もう一つ、「イリタブル・ベビー(いらいら・ベビー)症候群」と呼ばれるものは、体を硬くするという点が身震い発作に似ています。
いずれも、昔の言い方をすれば、「かんが強い、疳の虫」ということになります。対応は、この症状のために親が神経質になって悪循環に陥らないように、極力落ち着いて、優しく、ゆったり抱いてやったり、さすってやったりして落ち着かせましょう。
なるほど。遊んでいて思うようにおもちゃを扱えない時にぶるぶる。食事中苦手なものを食べたくない時にぶるぶる。歯磨き、顔拭きでぶるぶる。
ちなみに娘のぶるぶる攻撃のピークは1週間くらいで、その後はフェードアウトして今はピタリとおさまった。その代わり今は首を横にぶんぶん振る。誰も教えていなくてもこういうことができるのは本能なのか?そのくせ縦には振らないときた。全く一筋縄ではいかない。
この前スーパーで床に転がって泣きじゃくるいやいや期らしき子と必死の説得を試みるお母さんを見かけた。「ああ、あれはそう遠くない将来の私たちの姿だろうなぁ…」と身につまされた。
ベビーカーの安全バーに豪快な大開脚で両足を投げ出している娘に目をやると、ニヤニヤ笑っていた。無邪気な宇宙語で「私もやるよ」とでも言っているようだった。
※「もしかしたらうちの子も?」と思った方は“shuddering attack”で検索すると動画がありましたので、参考までに見てみてくださいね。もちろんてんかんの発作の痙攣なのか身震い発作なのかはきちんと病院で脳波を調べてもらわないとわかりません。娘は今回はすぐに落ち着いたので自己判断で病院には行っていませんが、もしまた同じような症状が出たら受診を考えています。
小児鍼のピエロ先生
小児鍼に行く前は、娘と娘の中の疳の虫は大暴れしていた。
日中はほぼ興奮状態。思うようにならないことがあれば金切り声で叫び、手にしたおもちゃや食べ物を投げた。私や夫を噛んだり、抓ったりした。そして毎晩2時、3時に起き出しては明け方までハイテンションで遊ぶ。娘の個性だと言い聞かせて相手をしてきたけど、やっぱりイライラしたし疲れた。そして、何か取り憑いたかのようなはっちゃけぶりに恐怖に近い不安を覚えることもあった。神頼みに近いことに目が行くようになり、宇津救命丸や樋屋奇応丸、虫封じのお寺について調べるようになっていた。その時たまたま小児鍼を知った。
「赤ちゃんに鍼を打つの?」と思う人もいるだろう。私も最初は「そんなことさせられない」と思った。でも実際は何のことはない、専用の鍼と手で身体を撫でるタッチセラピーのようなものだ。
関西の方だとわりとポピュラーらしい。近場にないかと探したら、まさかの徒歩圏内にあったのが今通っている鍼灸院だった。
東洋医学は合う合わないがあるし、即効性は期待できないと聞いていたから、「歩いていけるし、効果があったらめっけもん」くらいの軽い気持ちで通い初めた。
それが、3回目には嘘みたいに落ち着いてきた。いや、嘘ではなく本当に落ち着いてきた。
先生は娘との距離感を取るのが抜群に上手かった。「目が合わない(くらい癇の強い)子は久しぶりだなぁ。なかなか手強いお嬢さんだ」と言われた初日。鍼灸院に入るや大泣きし、先生の視線を避けるように顔を背けていた娘は、30分後には泣き止んで大人しく施術されていたのだから。
先生曰く、「目を合わせようとすると威圧的な感じを受ける子もいる」のだとか。よく授乳中に目が合わないと悩むお母さんがいるけど、それは障害云々よりもそういう子の可能性があるそうだ。そういう子には向こうからこちらを見てくれるよう、近づいてくれるよう仕掛けるのがいいらしい。先生は一見すると娘に無関心な風を装いながら、たまに離れた所からべろべろばあしたり、おもちゃを振ったりして大道芸のピエロのようにおどけてみせた。このツンデレ作戦にまんまとはまった娘は徐々にピエロ先生を目で追い始めた。今ではピエロ先生を見ると笑顔になる。
先生自身、長男さんがかなり癇の強い子だったそうだ。その長男さんと長男さんの育児で疲れきっていた奥さんのために小児鍼を勉強したそうだ。相当大変だったらしく、手強いお嬢さんの娘を凌ぐ激しさだったと言うから想像もつかない。だから私が話す娘のはっちゃけ話にも「そうそう!大変ですよね〜!」と前のめりで共感してくれた。私の悩みや不安に初めて同じ立場で共感してくれたのが先生だった。そして娘が感じてきたであろう恐怖や不安、寂しさに初めて共感してくれたのもまた先生だったのだと思う。
通い始めてからもうすぐ4ヶ月。たまに癇癪と月齢相応の自己主張はあるけど、のべつ幕無しの奇声はなくなった。夜泣き、夜遊びはほとんどない。布団で昼寝ができるようになった。いつも投げていたぬいぐるみを優しく撫でるようになった。ご機嫌な時間と何より笑顔が格段に増えた。
とはいえ、これは全部娘自身の頑張りと成長に他ならない。鍼に行かなくても娘は成長できただろう。でも小児鍼とピエロ先生との出会いは成長のきっかけのひとつになったと私は思っている。
「もう来なくても大丈夫ですよ」と言われる日が寂しくも待ち遠しい。
救世主現る
4ヶ月健診の日を境に、娘はとても穏やかな育てやすい子になった。寝付きもよく、ご機嫌な時間が増え、奇声を上げたり、泣き叫ぶこともなくなった。やっと笑顔で娘の成長を見守れるようになった。私にとってあの保健師は恩人だ。
…というドラマのような急展開は残念ながらなかった。むしろ娘が起こす台風は月齢と共にパワーアップしていった。お座り前の5ヶ月、はいはい前の7ヶ月と荒れに荒れ、一段落するかと思いきや、8ヶ月になると今度は成長し過ぎた身体に頭がついていかないのか、昼間の癇癪に加えて夜泣きと夜遊びが始まった。
私はといえば。そんな娘に相変わらず翻弄されていたけど、「これは娘の個性なんだ」とまず受け止められるようになってはいた。そして周りの力を借りることに後ろめたさを感じなくなってもいた。こんな端から見れば当たり前で些細なことも、保健師の言葉がなければ私は何も気付けなかったし、何も変わらなかっただろう。だから、やっぱり私にとってあの保健師は恩人であることに変わりはない。
とはいえ、現状打破するのは自分次第。結局、最初の一歩を踏み出す勇気がなかなか出ず、私が重い腰を上げられたのは娘が6ヶ月になってからのことだった。
娘が私と夫以外の人に関わることと、私が娘と夫以外の人に関わることに慣れるために、ひたすら外に出て人と会うことにした。泣かれる不安からずっと足が向かなかった育児支援センターや地元の育児サークルに行ってみた。少しでも娘がリラックスできればとベビーマッサージ教室にも参加した。
色々な場所で色々な人と関わるうちに、娘が誰でも彼でも何でもかんでも泣くわけではないことがわかってきた。自分と同じ赤ちゃんや小さい子とそのお母さんには親近感からか泣くどころか自分から近寄っていく。逆に苦手なのは人見知りの娘とは真逆のフレンドリーな年配女性。町中で「あらあ〜かわいい!何ヶ月?」とベビーカーを覗き込む年配の女性。「慣れてるから大丈夫よ〜!」と娘が泣き叫んでも怯まないベテランの保育士、女医、看護師。夫の母、私の祖母もこのタイプ。顔を見るだけで大泣きする。
赤ちゃんは子ども慣れしている人には懐くものだと思っていた。でも、赤ちゃんにも人の好みや相性がある。実際、娘は全く子ども慣れしていない私の弟や強面の叔父を見ても泣かなかった。
家に2人でいたら絶対に気付かなかった。好きなもの、嫌いなもの、楽しいこと、苦手なこと。娘のことは何もかも知ったつもりでいたけど、外に出ると思わぬ発見がある。そういう発見を積み重ねていくことは、娘を育てる世界でひとつだけの育児書を作り上げていくようで、大変だけど面白かった。
そうこうしているうちに、早過ぎた人見知りと後追いは少しずつ落ち着いていった。ちょうど娘が成長するタイミングではあったのだろうけど、実は、この時期から通い始めた小児鍼の効果も大きかった。これまたあまり赤ちゃん受けしないであろう男の先生ながら、娘との相性が抜群に良くて今もお世話になっている。保健師が恩人なら、さしずめこの先生は私たち親子の救世主だった。